その劇薬投入を、当初の予定からもさらに半年以上引き伸ばしたことで、かえって消費者が「必要な時に、欲しいモノを選んで、買う」という消費行動のあり方そのものを混乱させてしまった。これが落ち着くまでには、まだしばらくかかるだろう。

 それ以上に大きな問題は、日本では消費動向だけでなく社会全体の「前に進む気持ち」が萎えていることだ。

 世界中が「元気」を取り戻しつつある中で、日本だけが意気消沈したままではいけない。こういう時期こそ、前に進む意志を明確にして、研究開発に、そして新しい生産システムにお金を投じ、動くことが必要なのだ。

 せめて「プリウス、車名別の年間販売台数で新記録」を伝えるニュースの中で、十にひとつぐらいは以下のような「現実」をフォローするものがあれば、と思う。

・モーターや電池に使われるレアアース(ネオジム、ディスプロシウム、ミッシュメタル等々)の量は急増した。原材料価格も急上昇。今後どうする?

・モーターや電池のリサイクルはいまだ実用レベルにはほど遠い。今はどこまでならできるのか?

・ハイブリッド動力化で燃費が良くなるのは、「一定速~停止~発進」をある程度の頻度で繰り返す走行パターンに限られる。

 あるいはまた、同様の事象をより深く考え、調べ、理解する人々が、研究者や行政の中に少なからずいてくれれば、これからの日本はもう少し良い方向に動く。

 そう信じて、今年もこのコラムを綴ってゆこうと思う。