その「エコカー」の実態について、そして浅薄な情報だけで暴走が続く「エコカーブーム」への警鐘は、このコラムでも何回か書いてきているので(「砂上の最先端技術、日本のエコカー」「世界から取り残されていく日本の『エコカー』」など)、今回はこれ以上は踏み込まないことにする。
ただ、電池=電気駆動システムを組み込んだクルマが毎年数十万台も製造されて社会に出ていき、遠からず解体・リサイクルに回る状況が生まれた以上、これまでに確立されている産業プロセスから一歩踏み出した社会システムも必要になる。
ところが日本には、既存の自動車リサイクルからしていまだ不十分な状況に止まっている。こうした「トータルライフサイクル」についてのプロセスを自動車メーカーだけに預けることなく、社会全体で考え、構築してゆくことが急務となる。今日の工業文明のあり方としては、そこまで目を配らないといけないのである。
世界の消費動向は回復傾向にあるが・・・
ここで世界の消費動向に目を向けると、2010年通年のデータには明らかな回復傾向が表れている。つまり、2008年秋のいわゆる「リーマン・ショック」を引き金にした国際的なバブル崩壊、景気急降下からの脱出が、ようやく目に見える形を取り始めている、ということだ。
自動車の販売に関するデータを見ても、中国など新興市場の好況は言うまでもないとして、個人消費の多くを依存していたローンの焦げつきが世界バブル崩壊の震源となった米国も、2010年通年の乗用車系車両全体の販売台数はおよそ1160万台。前年比11.1%増となっている。
日本も、2010年の乗用車(軽を含めて)の販売台数だけ見れば前年比10%増。ただし、知ってのとおり、これは「エコカー補助金」の消費心理刺激効果に依存した結果でしかない。この施策が9月初旬でようやく打ち切りになったところから急激に需要が落ち込み、補助金効果がまだ「加速」していなかった1年前と比較しても、毎月3割ダウンという状況が続いている。
これに対して欧米では、例えばドイツが2009年1月に「古く環境負荷の大きな車両を最新のCO2排出量の小さいものに買い替える場合」に限って補助金を交付する制度を開始し、1度だけ予算枠を追加したものの、それを使い切った2009年7月には打ち切り。しかし、2010年12月の販売は前年同月比7%増と、堅調に回復に向かっている。
米国は、買い替え前と後の車両の公的燃費数値の差に応じて補助金の額を積み上げる(差が13マイル/ガロン=5.53キロメートル/リッター以上であれば4500ドル)という「Car Allowance Rebate System」と名付けた施策を2009年7月に始めたところ、当初10億ドルとした予算枠はあっという間に使い切り、すぐに倍の20億ドルを追加したものの2カ月弱でそれも使い切って打ち切りとなった。つまり、2010年の販売回復は、消費そのものが戻りつつある、と見ていい。