新潮社の会員制国際情報サイト「新潮社フォーサイト」から選りすぐりの記事をお届けします。
銃乱射「もう二度と」 被害高校の生徒、規制強化求め集会

米フロリダ州の銃乱射事件を受け、銃規制の強化を求めて米首都ワシントンでデモを行なう、地元や周辺州の中・高校生ら(2018年2月21日撮影)。(c)AFP PHOTO / Mandel NGAN〔AFPBB News

(文:青木 冨貴子)

 フロリダ州南部パークランドの高校で起こった銃乱射事件の翌日、

“精神疾患という問題に取り組まなければならない”

 ドナルド・トランプ米大統領はこう発言した。しかし、銃規制に関してはひとことも触れなかった。元生徒ニコラス・クルーズ容疑者が事件の1年以上前に精神科の治療を受けていたことから、問題は精神疾患だと断言したのである。

 フロリダ州の地元高校生たちは、17名の犠牲を出したこの事件の後になっても本気で銃規制に取り組もうとしない大統領と政府の無策に怒りまくっている。生徒たちは「変化が起きるまで声を上げる」と息巻き、ソーシャルメディアで訴え、授業をボイコットしてまでデモに繰り出す高校生もいるという。

 彼らの怒りは当然のこととはいえ、これまでに同様の事件が何度起こり、同様の声がどれだけ上がったことか。

 2017年11月、テキサスの教会で起こった乱射事件では26名が犠牲になり、10月、ラスベガスのコンサート会場で起こった乱射事件では58名が殺された。2016年フロリダ州オーランドのゲイ・ナイトクラブでの乱射で50名が殺されても、銃規制など少しも進まなかった。

 ニューヨーカーにとっては2012年、コネティカット州ニュータウンのサンディフック小学校で起こった事件はいまだに衝撃的だ。幼い児童20名と大人6名が犠牲になってから、犠牲者の母親などが立ち上がり、銃規制を全米に訴えた。しかし結局、同じ事件が繰り返されているばかりでなく、銃社会アメリカはますます危険な領域に踏み込もうとしている。

すでに下院を通過した「隠し銃携行許可」

 今回の事件の舞台になったフロリダ州南部は、引退したニューヨーカーが多く住む地域である。気候が温暖で、生活費も税金も安いフロリダでは一軒家が手頃な値段で手に入るし、ゴルフやテニスを楽しみながら、第二の人生を送るには理想的な土地柄である。しかし、フロリダは殺人や暴力事件、婦女暴行などの発生件数では全米トップクラスに入る。

 その大きな原因は、フロリダでは銃規制が緩やかで、好きな銃を欲しいだけすぐ手に入れることができるからだ。銃を売る見本市「ガン・ショー」もフロリダ各地で開かれるから、銃愛好家にとっては、まるで天国のような州なのだ。

◎新潮社フォーサイトの関連記事
「フリン前大統領補佐官」訴追でトランプ大統領の「眠れぬ夜」
米兵未亡人の怒りをかった「大統領の電話」と「封印された棺」
「私用メール問題」が浮上した娘婿「ジャレッド・クシュナー」の素顔