クリスマスの次の日から、「 恭喜發財(コンシファツァイ=普通話)」と、今年も儲かりますように!と中華系らしい願をかけ、このように旧正月(春節)、今年の干支「戌」にちなんだ様々な縁起物がショッピングモールやオフィス、花屋さんなど公共の空間を華やかに、賑やかに飾っている(クアラルンプールのショッピングモール、筆者撮影)

 「小さい頃から、犬が大好き」――。

 イスラム国家、マレーシアの獣看護師、リサさんは、患者のヨークシャーテリアのベッキーを手でやさしく撫ぜながら、処置を施す。

 24時間体制の動物総合病院「アニマル・メディカル・センター」(クアラルンプール)は開業46年、マレーシアで最も歴史ある動物病院。

 獣医師のパイオニアである創業者のシーバ医師は80歳を超える今も、息子のアミラン医師らとともに、毎日多くの患者(動物たち)の治療に奔走している。

イスラム教でも犬はタブーではない

患者のヨークシャーテリアの処置を施す イスラム教徒で獣看護師のリサさん(写真右)。「犬は大好き。『犬が不浄』というメディアや世界のイスラム教徒への一般的な教義への認識は、間違っている」という(クアラルンプールの24時間運営の動物総合病院「アニマル・メディカル・センター」、筆者撮影)

 患者には、ナジブ首相の愛猫や日本人など外国人の愛犬なども抱え、リサさんは「イスラム教の教義では、犬を含むすべての生物へのケアや愛護精神を促している。世界では『イスラム教徒にとって犬はタブー』と言われるが、間違っている」と指摘。

 「実際、マレーシアではすべての動物の虐待防止を目的にした新法、動物福祉法が2015年、施行された。当然、犬にも適用される。1953年制定の動物法より、厳罰を科し、野良犬の射殺による駆除も禁止された。」(アミラン医師)とし、今年1月にはイスラム教徒の裁判官による裁判で、マレーシアで犬を虐待したシンガポール人に罰金と有罪判決が下されたばかりだ(参照=http://m.themalaymailonline.com/malaysia/article/singaporean-gets-rm8000-fine-for-whacking-dog-with-crash-helmet)。

 さらに、「クルアーン(英語読みはコーラン)には、『犬は不浄なもの』とは記されていない。預言者ムハンマドが言った言葉で、その解釈は、様々。宗派によっても、個人によっても犬への接し方や対応はそれぞれなんです」(リサ獣看護師)と教えてくれた。

 主要な外国メディアは(ロイターや英デイリー・メール=AFP配信、 https://www.reuters.com/article/us-lunar-newyear-malaysia/in-year-of-the-dog-malaysia-plays-down-skirts-dog-decorations-idUSKBN1FB173http://www.dailymail.co.uk/wires/afp/article-5315783/Who-didnt-let-dogs-New-Year-canines-stashed-away-Muslim-Malaysia.html)、今年の旧正月(2月16日)を前に、アジアの中でもとりわけ、中華系を多く抱えるマレーシアで、戌年の今年、「犬が不浄」とされるイスラム教徒との対立を避けるため、干支である犬の飾り物が自粛気味であると報道。

 マレーシアでは、約3200万人の国民の約61%がイスラム教徒だが、同時に国民の約20%が中華系を中心とする仏教徒が占め、仏教が第2の宗教でもある。

 しかし、どうやら、この報道の根本的な“背景”、さらに実態は少し違うようだ。