「歩けない子供たちに自ら移動する経験をさせてあげたい」
大分県にある別府発達医療センターで理学療法士をする武智あかねさん(30歳)は、いくつかのもの作り企業に開発協力を求めたときに、こう訴えていた。
「注文通りのもの作りをしてほしいのではなく、自分で歩くことができない重い障がいを抱える子供たちを理解したうえで、私たちと一緒に考えてほしい」
これに応えたのは半導体製造装置メーカーのブライテック(大分県大分市)だった。歩行器や車いす、姿勢保持装置の電動化装置『B-GO』を開発した。
汽車の先頭車両をモチーフにしたデザインで、車いすや歩行器などの前方に取りつけて牽引する。小さな手で握れる大きさのジョイスティックで操作する方向に進める。遊園地で乗り物に乗るように楽しめるという。
今年9月末に東京ビッグサイトで開催された国際福祉機器展で、武智さんとブライテックで技術開発部部長を務める相原茂さん(58歳)に開発の背景を聞いた。
子供たちの世界を理解できるもの作り企業
武智さんは、別府発達医療センターで重症心身障害児という重度の身体障がいと重度の知的障がいをもった子供たちのリハビリに取り組む。
「子供の発達は神秘的。赤ちゃんは発達の過程で寝返りをして、座って、立って、歩けるようになります。しかしその一方で、こうした過程を踏んでいくことが難しいお子さんもいます」
「そのような子供たちが楽しめて、自分の意思で移動することを経験する。それを積み重ねることで世界の広がりを感じてもらいたい」
武智さんは、このように企業との開発を考えたきっかけを話す。