前回は、農業の現状と問題点について述べた。今回は将来の農業の育成・発展のための提言をまとめた。

<1>新しい投資と労働力増加のために

 今日の小規模自営農業を基本とした生産体制では、収入を伸ばすことはできず、コストも増加し、競争力を持つことはできない。すなわち、就業者1人当たり収入(収穫)が増加することなく、資金・設備や1人当たりの生産性を向上させることができない。

 その結果、やむなく投資はできず、新しい労働力も投入できない(例えば、子供に継承させられない)という悪循環に陥ってしまっている。

(1)農業の規模拡大を進めよ

 まず、農業の大規模化を進めることから始めなければならない。例えば、農業生産法人を積極的に拡大し、農地を集約して利用しやすくすることである。

 そのためには、小規模農家の保護育成を基本とした今日の農業政策を、その根本から改め、諸法制や運用を改定することである(農地の所有と利用の分離)。併せて、2次3次産業からの参入を容易にし、これら参入者の育成・保護を積極的に推進しなければならない。

 法人化により大規模化が進めば、生産性が向上し、競争力も生まれてくる。生産法人に、営農者が自らの土地や設備を出資して参加する道も開かれる。また、農業労働者として、配当や給与によって生計を立てる仕組みもできる。

(2)法人化と多角化で農村の就労機会を増やせ

 法人化を進めれば、営農者の子弟に限らず、サラリーマンも農業に参加しやすくなり、若い労働力を吸収することが可能になる。つまり、2次3次産業から農業にサラリーマンを誘導できるのである。

 農村を離れて都会に出て、将来の見通しもないまま低賃金と高いコストで生活に喘いでいるよりも、田舎の低コストの余裕ある生活を選択する若者たちが出てくる。もし、これでも若い労働力が不足するのなら、外国人労働者を積極的に受け入れることも、重要な選択肢である。

 さらに、農業法人や農協などが食品加工まで手がけるなら、生産物の付加価値を高めるだけでなく、農村での就労機会を増やすこともできる。また、次に述べる流通業者との連携で、国内だけでなく輸出の道も開かれる。加工が進めば、過剰生産物や形や少々のキズなどで販売に回せない作物も、加工原料として吸収でき、保存により時期を選ばぬ安定した流通が可能となる。