ロシア経済の底打ちが明確化している。8月11日に発表された2017年第2四半期の実質GDP(国内総生産)速報値は前年同期比+2.5%と3四半期連続のプラスとなった(2016年4Q +0.3%→ 2017年1Q +0.5%)。
ロシア中銀はじめ多くの民間金融機関・国際機関は2017年通年の実質GDP成長率見通しを1%台半ばに据え置いているが、最も強気の経済発展省は9月初に+2.1%(想定油価格=49ドル/バーレル)に引き上げている。
中央銀行が経営介入
こうしたなか、8月29日、ロシア中銀は資産規模で国内第8位の大手民間銀行アトクリティエ(Otkrityie)に対し、中央銀行の特別措置を適用することを発表した。
特別措置とは新たに設立された銀行救済ファンドが同行の株式の75%を取得、中央銀行が自ら同行の経営に介入するというものである。
ロシア中銀がロシア国内の「銀行洗浄作戦」を展開して業績不振の小規模泡沫銀行のライセンスを積極的に取り消していることは以前の拙稿(2017年2月22日「春爛漫のロシア株式市場、銀行は冬真っ只中」)でも触れた。
しかし、この夏はやや状況が異なる。7月には資産規模で27位のバンクユグラがライセンスを取り消された。
同行はリーマンショック以降、業界内でも最も高い預金金利で積極的に預金勧誘を行う銀行として有名であったが、そうしたハイリスク・ハイリターンのビジネスモデルがあだとなって中銀から業務停止を命じられることとなった。
それに先立つ3月にはロシアの有力地方であるタタールスタン共和国のタトフォンドバンクのライセンスも取り消されている。同行は資産規模で42位であり、泡沫銀行とは言えない規模である。
しかし今回中銀の特別措置の対象となったアトクリティエ銀行はこれらの銀行と比べて格が違う。
同行はロシア最大の民間銀行であり資産規模で4位(2017年6月末)、中銀が定める「ロシアの金融システム上重要な銀行」とされる10行のうちの1行である。
したがって、ライセンス取消し→業務停止→DIC(預金保険公社)への移管→預金者への預金払い戻しという、これまでの典型的な破綻プロセスではなくロシア中銀による「ベイル・アウト」(外部資金による救済)というロシアでは初めての破綻措置が取られた。