南スーダンからPKO部隊が帰国、防衛省で式典

東京・市ヶ谷の防衛省で行われた、南スーダンに派遣された陸上自衛隊の帰国を祝う式典で、儀仗隊を巡閲する安倍晋三首相と稲田朋美防衛省(2017年5月30日撮影)。(c)AFP/Toru YAMANAKA〔AFPBB News

 「日報」問題で防衛省が揺れている。「疑惑ぬぐえず」「文民統制は機能しているのか」「隠蔽体質」「陸自の反乱」等々、メディアは相変わらずセンセーショナルに書きたてる。

 「森友」問題や「加計」問題と共通しているのは、最も重要な本質的議論が抜け落ち、枝葉末節が肥大化していることである。加えて「日報」についての誤認識が重なり、騒動が拡大しているようだ。

 ことの発端は、南スーダンの国連平和維持活動(UNMISS)に派遣された陸上自衛隊が日々活動報告を司令官に上げる「日報」の文言である。

 自衛隊の国連平和維持活動への参加については、紛争当事者間で停戦合意なされていることが大前提である。陸自が派遣されていた南スーダンについては、近年、政府軍と反政府勢力の衝突が相次ぎ、停戦合意はすでに崩れているのではないかとの指摘があった。

本質的議論が抜け落ちた国会論争

 稲田朋美防衛大臣は、派遣継続の正当性を主張するため、日報にある「戦闘」の文言は避け、「武力衝突」と言い換えて国会で答弁した。

 この日報が情報開示請求されたが、防衛省は既に廃棄されたとして開示しなかった。その後、他の部署に残っていたことが判明したが、「今更あったとは言えない」として公開しないことにしたという。

 この時点で、稲田防衛大臣はその報告を受けていたのではないか。もしそうであれば、「(あったことを)報告を受けていない」との国会答弁は虚偽となる。大臣を含んだ組織的な隠蔽ではないかというのがこれまでの騒動の顛末である。

 そこには、南スーダンから撤収に至った状況判断、あるいは今後の国連平和維持活動に対する日本の姿勢は、PKO5原則はこのままでいいのか、といった本質的な議論は全くない。

 国連平和維持活動は「停戦監視、兵力の引き離し」といった伝統的な「第1世代の平和維持活動」から、現在は内戦型紛争に対する「第2世代の平和維持活動」に移行している。

 破綻国家(failed states)、あるいは民族差別、宗教対立、そして貧困などが原因となる虐殺、民族浄化が多発しており、人権侵害防止のため、難民支援、武装解除、社会復帰といった支援活動のみならず、住民保護や文民保護のため、武器の使用を含めた積極的関与が基本的方向性となりつつある。