誤解が日本人に楽観を生んでいる。
北朝鮮が初めてICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験に成功した。これを北朝鮮がどれくらい重視しているかは「特別重大報道」として発表したことから分かる。
米国防総省などは5500キロ以上の飛翔能力を有するICBMとしたが、再突入技術は実証されておらず、核搭載できる能力も示されていないとして「米国への脅威は限定的」との認識を示した。
またジョンズ・ホプキンス大学の研究グループは、2年以内にICBMが実戦配備される可能性があると示唆した。ここでいう可能性とは、小型化された核弾頭を搭載し、命中精度が高く、米本土の主要都市を攻撃できる射程のICBMのことである。
従って、2年というのは米国(本土)にとっての猶予期間である。また、この期間に米国が迎撃態制を確立しても、北朝鮮のICBMに睨まれている限り、広島の百倍、千倍の被害さえ予測される状況下で、自国の被害を度外視して日本への拡大抑止を果たすであろうか。
時間とともに、米国はますます窮地に立たされ、「安保条約5条」は機能しないことが危惧される。
7月当初に日本は何をしていたか
都知事戦が行われた7月2日、中国の軍艦が津軽海峡で1時間半にわたって領海侵犯した。津軽海峡は領海とすることもできるが、日本は領海幅を狭く設定して、中央部を「国際海峡」として開放している。中国の情報収集艦は何を収集していたのだろうか。
中国は英国と合意した香港返還条件の一国二制度を一方的に反古にし、また南シナ海では仲裁裁判所の裁定を無視して埋め立てた人工島の一層の軍事基地化を進めている。
東シナ海の日中中間線付近では、日本とのガス田合意を無視して施設の建設と試掘を続けており、国内では山林やレジャーランドなどの買い占めを進めている。
同4日には北朝鮮がICBMの試射に成功し、「特別重大報道」として発表した。明らかに米ドナルド・トランプ大統領が執ってきた軍事的圧力には屈しないとの意思表示であり、大きな意味を有するからである。
7月初めの数日間、中朝が日本に大きな影響をもたらすとみられる動きをしたにもかかわらず、日本では取り立てて中朝への対策を考えるような動きは見られなかった。
それどころか、前川喜平・前文科省次官を参考人として招致し、加計学園問題を閉会中審査する決定をした。何と能天気な国会議員たちであることか。