朝日新聞は報道紙というよりもイデオロギー紙と言った方がいいようだ。最近の3つの事案についての紙面で、そのことを強く感じさせられた。
以下、安倍晋三首相が9条に自衛隊の記述を追加すると述べた憲法改正に対する河野克俊統合幕僚長の発言、陛下の譲位に関連して民進党をはじめとする野党が女性宮家の創設検討を主張した件、そして日本弁護士連合会が死刑廃止宣言をしたときの状況について検証する。
いずれにおいても、自社の見解に国民を誘導する紙面記事になっている点を確認したい。
河野統幕長発言に関して
河野統幕長は、去る5月23日、日本外国特派員協会で講演し、安倍首相が憲法に自衛隊を明記する発言をしたことについて聞かれた。
朝日新聞は25日付の「軽率すぎる改憲発言」とした社説を掲げ、冒頭で「自衛隊制服組トップとして、軽率すぎる発言である」と重複をいとわず書いた。
文学作品なら、あっと驚かして次へ誘う手法で褒められるかもしれない。しかし新聞の書き出しとしては、ただ「トップ」「軽率」「発言」などが第一印象として強く植えつけられるだけで、一体全体何について述べているのかさっぱり分からない。
その後に、「一自衛官として申し上げるなら、自衛隊の根拠規定が憲法に明記されるのであれば非常にありがたいと思う」と、河野氏の発言を続ける。
ここで初めて、「思う」対象が「自衛隊を憲法に明記すること(を安倍首相が発言した件)」に対してであることが分かる。
続けて「河野氏は『憲法という非常に高度な政治問題なので、統幕長という立場から言うのは適当でない』とも述べていた」と書く。「とも述べていた」では、後で付け足した感じであるが、実際は「誤解されないために」最初に述べているのである。
朝日はさらに続けて、「首相のめざす改憲が実現すれば、隊員がより誇りをもって任務を果たせるようになる―。河野氏はそう考えたのかもしれない。だが、それを公の場で発言するのは話が別である」として、服務の宣誓で憲法遵守や政治的活動に関与しないことなどを誓っていることに反するのではないかと詰問する。
また、「河野氏は頻繁に首相と会い、軍事的な助言をする立場だ。そうしたなかで政治との距離を見失っているとすれば、文民統制の観点からも見過ごせない」と述べる。
この2つの文章からは、河野氏の内面の憶測と首相との距離の近さを前提に据え、政軍癒着で文民統制上問題があると筋立てしているように読める。
朝日は文脈の前後を入れ替え、そのうえに推測を含む論理の飛躍で、一方的に河野発言に難癖をつけている。