メイ英首相、北朝鮮に「断固とした」姿勢で 安倍首相と会談

英ロンドン北西部にある首相別邸チェッカーズで握手を交わすテリーザ・メイ首相(右)と安倍晋三首相(2017年4月28日撮影)〔AFPBB News

 安倍晋三首相は5月3日、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年に憲法を改正したい意向を示した。

 北朝鮮の核とミサイル開発が着実に進み、脅威が目の前に迫っているなか、また中国の軍事拡大が日本周辺の軍事バランスを大きく崩し始めているなか、これ以上、今の自衛隊という組織では日本を守り切れないという認識である。

 これまで7回にわたって自衛隊の歴史を振り返ってきた。現憲法下でも自衛隊は国内にそして国外で様々な活動を行い、成果を上げてきた。しかし、本当に差し迫った危機にあっては、自衛隊という法律の規定が日本の防衛を危うくしてしまう。

 最終回の今回は、この問題を徹底解説する。(前回の記事はこちら

憲法に明示的な規定のない自衛隊

 日本国憲法のどこにも「国防」についての規定はない。ましてや憲法制定後に「警察予備隊」から「保安隊」を経て創設された「自衛隊」の規定があるわけもない。

 憲法では、前文で、我が国の安全と生存を諸国民の公正と信義に依存すると謳い、この考え方に従い、第9条1項で戦争の放棄を規定し、同2項で陸海空軍戦力の不保持及び国の交戦権を認めないことを規定している。

 第1項の戦争放棄規定は、1928年の不戦条約に淵源し、この考え方は国連憲章に引き継がれるとともに、駒澤大学名誉教授の西修氏によれば、「世界の成典化憲法188を調べたところ、平和条項を持つ憲法が158(84%)にのぼることがわかった」と述べておられる。

 すなわち、戦争放棄規定が日本独自のユニークなものでないことは明らかであるし、また不戦条約は自衛権を否定するものではないことは、条約の審議、調印の過程で国際的に確認されている。

 憲法に明示的な規定のない自衛隊が、なぜ存在しているのか?

 それは政府が時代とともに変えながら行ってきた憲法解釈によってである。朝鮮戦争の最中、国内治安維持のため警察の予備の部隊として発足させた警察予備隊から保安隊へ、そして自衛隊へと転換し今日に至る過程で、政府は憲法解釈を変えてきた。

 しかし、現在の政府解釈では、「日本国憲法は、第9条に、戦争放棄、戦力不保持、交戦権の否認を置いている。我が国が独立国である以上、この規定は主権国家としての固有の自衛権を否定するものではない。我が国の自衛権が否定されない以上、その行使を裏づける自衛のための必要最小限度の実力を保持することは、憲法上認められる」としている。

 このような政府による憲法解釈に基づき自衛隊は存在し、創設以来今日まで、日本の領土、領海、領空で国家主権の維持のために、そして国民の生命と財産を守るために行動してきた。

 海外においても、世界中のあらゆる地域に展開して、国際平和維持活動、災害救援や人道支援のための国際緊急援助活動、あるいは海賊対処活動など、憲法の下にある自衛隊であるがための特殊な条件の下ではあるが、世界から派遣されている各国軍隊と共同で粛々と任務を遂行し、しかるべき成果を上げてきた。

 国の存立にとって不可欠な自衛のための実力組織が、国の基本法典である憲法において明示的な規定もなく、その時々の憲法解釈によって辛うじて存在たり得ているという事実は、果たしてこれが独立主権国家の姿として正しいのか、という疑問を抱かざるを得ない。