日本企業は欧米の機関投資家の「啓蒙主義」に対抗できるのか(写真はイメージ)

 株主総会シーズンに入って機関投資家の動きが活発になっている。米国最大の公的年金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)など英米の機関投資家は、取締役会に占める社外取締役の比率を「3分の1以上」にするよう日本企業に共同で要請し、応じない企業の役員選任議案には原則反対票を投じると報じられている(6月9日付け日経新聞朝刊)。

 東京証券取引所が2015年6月に策定した「コーポレートガバナンス・コード」の原則4-8は、東証第一部・第二部の上場会社に対し、2名以上の独立社外取締役の選任を「コンプライ・オア・エクスプレイン」規範で求めている。すなわち、原則を順守(コンプライ)しない場合は説明(エクスプレイン)が求められるわけだ。

 2016年12月に東証が行った調査によると、独立社外取締役を2名以上選任している会社の比率(原則4-8のコンプライ率)は79.5%となっている。また、東証の調査では社外取締役比率「3分の1以上」の集計はないようであるが、日経平均株価を構成する225社でこの条件を満たすのは、約4割にとどまると報じられている(6月9日付け日経新聞朝刊)。

 その意味で、「3分の1以上」というハードルはかなり高いが、以下ではこの要求が意図に反してモニタリングの実効性を低める可能性があることを示したい。

一部の“スター人材”にオファーが集中

 容易に想像できるように、上場企業の社長経験者や大学教授など優秀な社外取締役を確保するのは困難である。こうした中、急ごしらえで社外取締役を増やそうとすると、一部のスター人材にオファーが集中することが予想される。