「米黄金時代は50年代だった」
米リベラル言論界の重鎮、ノーム・チョムスキーMIT(マサチューセッツ工科大学)名誉教授(88)の新著が出た。
「Requiem for the American Dream」(アメリカン・ドリームへの鎮魂)。
同教授のインタビューを柱に制作されたドキュメンタリー映画の脚本を下敷きに書かれた172ページのムック本である。映画は4年がかりで作られ、2016年1月末に完成している。つまりドナルド・トランプ第45代大統領就任1年前だ。
チョムスキー教授は「1950年代こそ米社会の黄金時代だ」と見た。
1950年代とは、民主党のハリー・トルーマン第33代大統領の政権の後半、共和党のドワイト・アイゼンハワー第34代大統領の政権の前半だ。
平均的労働者には正当な賃金が支払われていた。労働者たちは、ローンで家を買い、新車を買った。皆が家族と一緒に「アメリカン・ドリーム」を満喫できる時代だった。
米製造業が生産した製品を米国民が買う、そこには米企業・工場の海外へのアウトソーシングなどあり得なかった。労働者を守る労働組合は強固だった。労使関係はすこぶる良かった。
ところが、その後、米国経済は退化の一途を辿り、縮小均衡の時代に入る。
高い失業率、企業倒産や銀行破綻、大学授業料の高騰が平均的労働者の生活を圧迫した。その一方で貧富の差は年々広がって行った。人口比1%に満たない超富裕層が富の99%を独占している。