「ハネムーン期間」のなかった「裸の王様」
米国のドナルド・トランプ政権は4月29日に発足100日目を迎えた。通常、新しく大統領を選んでから100日間はメディアも野党も慣例上、新政権批判は控える。いわゆる「ハネムーン期間」だ。
ところが就任早々から唯我独尊ぶりを発揮し裸の王様となったトランプ大統領にはその期間はなかった。
主流メディアと野党民主党は、トランプ大統領のやることなすことにケチをつけ、辛らつな言葉で激しく批判を繰り返している。そうした中でトランプ政権を担うはずだった政府高官が相次いで辞任に追い込まれている。
各省庁の中堅幹部のポストはいまだに埋まらず。なり手がいないのか、えり好みしているのか――。
その間、公約に掲げてきた政策で実現したのは環太平洋経済連携協定(TPP)からの脱退のみ。あとは保守派のニール・ゴーサッチ高裁判事を空席の最高裁判事ポストに送り込んだことぐらいである。
内政の沈滞への矛先をかわそうと、対北朝鮮政策では軍事力を誇示して脅しに出たようだ。「瀬戸際外交」を弄んできた金正恩委員長もこれにはさすがに背筋が寒くなったのか、この時期での核実験だけは避けた。
トランプ戦略は一見成功したかに見えるが、米国民はそれほど歓喜しているわけでもない。朝鮮半島での米朝のにらみ合いが本当に「第2のキューバ危機」になるとは思っていないからだ。
日韓に比べると、米国民にはさほどの危機感がないというのが、筆者が肌で感じる現地感覚だ。いずれにせよ、1つだけ痛切に感じることがある。
トランプ政権が誕生して100日たった今になっても、当選の時点から「米国の時計」はずーっと止まったままの状態ということ。あの「時」から今まで(あるいはずっと以前から)米国世論は、真っ二つに割れたままなのだ。
右と左が誇示する価値観は全く相容れず、その両極化は後戻りできないほどまでに広がっている。