鼓童の屋台囃子。(写真提供:鼓童)

 地方の過疎化が進む中、最近は、各地域が地元の魅力を打ち出すことで、若者の移住・定住につなげる試みが増えている。

 しかし、若者が「この地に移り住みたい」と思うほどの動機を提示するのは簡単ではない。この地域“だけ”が持つ魅力として、どんな資源を提示できるか。その地域ならではのオーセンティシティ(真正性)や“本物”を感じさせる価値がないと、わざわざ移り住む覚悟をしてくれないのが現実だ。

 そこでヒントとなるのが、地域が持つ独自の伝統や文化を生かすことだ。ひとつのモデルケースとして、佐渡島に拠点を置く太鼓芸能集団「鼓童」の活動を前回の記事「舞台は世界!全国の若者が集う佐渡の太鼓芸能集団」で紹介した。「鬼太鼓(おんでこ)」という島独自の太鼓文化を持つ佐渡島で、鼓童は若者を研修生として全国から呼び寄せ、その地で学ばせる。そして研修生はメンバーになると、島民として暮らしていく。このシステムを80年代から90年代にかけて作り上げた。

 そんな鼓童と佐渡島の活動は、まだまだ広がりを見せる。彼らは外から人を呼ぶだけでなく、地元の子どもたちに技術を伝えることで、島の人材づくりに寄与しているという。地域経済の専門家である國學院大學経済学部の山本健太准教授の話を元に、詳しい内容を紹介していく。

國學院大學経済学部准教授の山本健太氏。博士(理学)。東北大学大学院理学研究科博士課程修了。九州国際大学特任助教、同助教、同准教授を経て現職。地理学の視点から日本の経済・地域経済の振興を研究する。「ひたすら歩き、話を聞くことで地域の経済が見えてくる」を信条に、フィールドワークを中心とした実証主義に基づく研究を続ける気鋭の地域経済専門家。

島の中学生との交流でさらなる地域貢献

──1980年代には、鼓童に入りたい若者が佐渡島で学ぶ「研修所」が立ち上がりました。その他にも、この時期に行われたことはあったのでしょうか。