「九神ファームめむろ」 芽室町長の想い
訪れたのはまだまだ寒さの残る2月中頃。北海道の帯広市の西隣に位置する芽室町。その芽室町の市街地から車で10分ほど南下したところに九神ファームめむろ(本社:北海道河西郡芽室町)はある。
この九神ファームめむろでは、知的・精神障がい者の雇用を促進しており、現在は24人の障がい者の方(全従業員数は29人)が働いている。
障がい者の働く場というと、一般の企業で雇用される人もいるが、一般の企業で就労が困難な方と直接雇用契約を結び賃金を支払う「就労継続支援A型事業所」。また、直接雇用契約を結ぶことが困難な方と雇用契約を結ばず利用する「就労継続支援B型事業所」がある。
九神ファームめむろは「A型事業所」にあたるが、このA型事業所の平均給与(工賃)は日本全体で月額6万6412円(平成26年厚生労働省発表)。しかしこちらの九神ファームめむろでは、なんと11万5000円以上(6.5時間勤務/週5日)。
この給与は全国的にもかなり高水準でA型事業所としては平成26年度の厚生労働省のデータで見ると上位5%に入る。
人によるが障害年金を受け取ると、十分に自立した生活が可能だ。なぜこれほどまでに高い給与を支払うことができるのか。
九神ファームが事業を始めたのは2013年4月。芽室の宮西義憲町長が障がい者の働きの場の提供を計画したのはさらに遡ること数年。
町長になる以前、教育長をしていた宮西町長は「すべての子供を幸せにしたい。しかし、町として教育で支援ができるのは義務教育の間まで。何らかの事情で不登校の生徒や障がいを持つ生徒がその先どうやって自立して生活できるのか。一番大事なのはその先の働く場。自立可能な収入を得て働くことができる場が必要だ」と考え計画を提案した。
「役所だけで働く場を提供してしまうと、事業として成り立たないものが出来上がってしまう。そうなると給与(工賃)も低くなってしまう」
「雇用率達成のためだけの雇用ではなく、障がいのある彼らを人手ではなく新しい付加価値を生み出す『人財』として活用し、それにより利益を生み出すことができる企業を作りたい」と考え、企業誘致を行った。
しかし、企業としても利益を見込めない限り誘致は進まない。