日本理化学工業でチョークづくりが行われる様子(筆者撮影、以下同)

 ICTの進展により、企業経営がガラス張りになる「透明化社会」において、顧客に選ばれ続ける企業になるためには、確固とした経営理念・経営哲学が不可欠だ。今回は、障害者雇用の本当の意味を教えてくれる会社を紹介したい。

障害者雇用=コスト?

 障害者の数は年々増えている。障害者の法定雇用率も引き上げられている。それでも遅々として障害者の雇用が進まないのは、なぜだろうか 。

 2016年4月1日から施行された「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律」(いわゆる「障害者差別解消法」)。すべての国民が、障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現に向け、障害を理由とする差別の解消を推進することを目的とした法律だ。

平成27年版障害者白書」の推計によると、日本の障害者は身体障害者393.7万人(内18歳未満7.8万人)、知的障害者74.1万人(同15.9万人)、精神障害者320.1万人(20歳未満17.9万人)。

 人口1000人当たりでは、身体障害者は31人、知的障害者は6人、精神障害者は25人、計62人。重複している人もいるため、単純な合計にはならないが、国民の約6%が何らかの障害があることになる。しかもその数は年々増加傾向にある。

 障害者の雇用については、民間企業に義務づけられた「法定雇用率」(労働者の総数に占める身体障害者・知的障害者である労働者の割合)が、従前の1.8%から、平成25年4月1日より2.0%に引き上げられた。企業にはこれまで以上に障害者を職場に受け入れることが求められている。

 しかしながら、2014年6月1日現在の民間企業における障害者の雇用数は約43万人に留まっている。11年連続で過去最高を更新しているとはいえ、雇用率は1.82%であり、法定雇用率を達成した企業の割合は44.7%と、依然として半数に満たない状況となっている。

 企業において障害者雇用がなかなか進まない理由として考えられることは、絶対に口に出しては言わないが、障害者を「戦力」ではなく「コスト」と見なしている企業が多いことが挙げられる。

 法定雇用率を達成する、すなわち、コンプライアンスを満たすために障害者を採用するのだ。採用された障害者は、このような職場では幸せになれるはずがない。これではいくら障害者の雇用が増えても意味がない。しかし、これが悲しい現実だ。

人間の「4つの幸せ」を叶える場所

 神奈川県川崎市に、日本理化学工業という会社がある。学校などで使われるチョークでは日本でトップシェアを誇る会社だが、全社員83名のうち61名が知的障害者だ(2016年2月現在)。しかもその半数はIQ50以下の重度の障害者だというから驚きだ。