JBpressで連載を始めることにした。これから毎週水曜日、ヌーベルバーグ「新しい波」というコラムを書いていきたい。
1960年前後、ジャン・リュック・ゴダールやフランソワ・トリフォー、アラン・レネなど若い映画監督が新感覚の映画を撮り始めた。同じ頃、英国ではアングリーヤングマン、怒れる若者たちと呼ばれる芸術運動が起きた。
一方、私も社会に新しい波を起こしたいと思って、2つのNGOと1つの研究所を作っている。25年前に日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)、12年前に日本イラクメディカル・ネット(JIM-NET)を作った。
イラク難民キャンプでの支援活動にて
2015年、地域包括ケア・システムを2025年までに日本中に作るように日本政府はメッセージを出した。実は30年前から、僕は地域包括ケアづくりをしていたので、そこには仲間がたくさんいる。
そこで、月に1~2回、鎌田がこの原稿を書き、鎌田の周りで面白いNGO的活動をしている若者が、交代でこの連載を協力・分担して、ヌーベルバーグ「新しい波」を書いていく。
人生は面白いはずなのに、生きるのは難しい。どうしたら生きるのが楽しくなるのかいつも考えてきた。
僕はいま68歳。以前から壁にぶつかっていた。傍から見ると屈託なく自由に生きているように見えかもしれない。だが、これまでの自分は本当に自分らしく自由に生きてきたのかと悩んでいた。
子供の頃は親や周囲の大人の期待に応えて、「いい子」を演じてきたのではないか。医師になってからも、地域の人や患者さんや同僚のために「いいカマタ」を演じて、無意識のうちに自分を殺してきたのではないか・・・。
ここ数年、そんな悩みがしこりのように心の奥に生まれていた。そこに、一筋の光のように、「遊行」(ゆぎょう)という言葉が浮かんできた。
生きるのがぐっと楽になった。
古代インドの聖人は、人生を4つの時期に区切った。四住期(しじゅうき)と言われている。
「学生期」(がくしょうき)は、生まれてきた命が学び、成長する時期のことを言う。
「家住期」(かじゅうき)は人間として成熟していく時期。家族をつくったり、家をつくったり、人によっては会社を起業したりして、いちばん汗をかくときでもある。
「林住期」(りんじゅうき)は、仕事が終わった後、林に隠棲しながら、生きるとは何か、人間とは何かと思索を深める。
そして、「遊行期」(ゆぎょうき)は、人生の締めくくりの時期と言われている。人によっては解脱(げだつ)、煩悩から自由になることを目標にする時期だという。