そして、「働き方改革」を進めるうえで避けて通れないもう1つの課題が生産性の向上である。労働時間を短縮するにはいっそう生産性を高めなければならないし、それには社員の潜在的な能力・意欲を発揮させ、仕事の成果に結びつけることが必要だ。

 これもまた成功のカギは個人の「分化」にかかっているといってよい。実際、個々人に仕事上の裁量権を与えると同時に報酬を自分でコントロールできるようにしたところ、1人あたりの生産性が数倍に高まったという企業があるし、個人の組織に対する一体化を求める企業より自律性を尊重する企業のほうが生産性が高いというデータもある(参考:筆者の近刊『なぜ日本企業は勝てなくなったのか: 個を活かす「分化」の組織論』新潮社、2017年3刊)。

 日本企業はこれまで集団主義で一体感を重視した経営で成功を収めてきた。しかし前回(「本当は全然高くなかった日本人の仕事への『熱意』」)紹介したように、日本人の仕事に対する熱意は決して高くない。またIT化やソフト化による仕事の革命的な変化により、個人に求められる能力や努力の質、組織のあり方も大きく変わってきている。「一丸」や「絆」を唱えるだけでは通用しなくなっているのだ。

 個人を組織・集団から「分化」して自律性を高めると同時に、組織としての統合を維持し、貢献を引き出す仕組みをつくっていかなければならない。