また、東芝の原子力部門を統括しており、一時はWHの社長を務めていた志賀重範会長が辞任すると報じられているが、志賀会長の責任は極めて重大だ。WHを含めた原子力の責任者がこのタイミングで辞任するというのは、敵前逃亡に等しい。今、辞任を認めてはならない。責任者としてこの後始末をきちんと行い、説明責任を果たし、その上で辞めていただきたい。当然、退職金はゼロだ。

東芝の社長は金太郎飴か

 東芝の綱川智社長は、1月27日の記者会見で「原子力をエネルギー事業の中で最注力としてきたが、この位置づけを変えていく」と説明したが、「今さら何を言っているんだ」と思う。

 2005年に社長に就任した西田厚聰氏が、「原子力と半導体」を東芝の基幹事業とする方針を打ち出した。そして、2006年には、米WHを6000憶円で買収した。集中と選択により、「原子力と半導体」を基幹事業とする。この経営方針に問題はない。

 ところが、2011年3月11日に東日本大震災が起き、福島原発が大事故を起こした。その結果、日本だけでなく、世界の原発推進ムードは一気にしぼんでいった。にもかかわらず、東芝は、現時点に至るまで、「2030年までに原発を65基新設する」という方針を一切変更していない。これは、常識的にいって、理解しがたいことである。

 外的環境は常に変化し続ける。経営とは、その変化に対応して、自社が生き残ることができるように、戦略を決め、それを実行させることである。なぜ、東芝は、福島原発事故が起きても、「原発65基新設」の目標を変えようとしないのか?

 よほど東芝の経営陣は頭が悪いのかとも思うが、原因は違うところにありそうだ。そもそも、原子力事業を東芝の基幹事業にするということは、15代社長の西田氏が決定したことである。それが、16代社長の佐々木則夫氏、17代社長の田中久雄氏、18代社長の室町正志氏に引き継がれ、そして、19代社長の綱川氏もその方針を踏襲したということだ。