ババを掴まされた東芝

東芝の原子力事業の巨額損失が発覚するまで

 まず、原子力事業で7000億円規模の巨額損失が生じた経緯を、上の図を用いて説明しよう。ことの発端は、2006年に西田厚聰社長(当時)が、米原子力大手「ウエスチングハウス」(WH)を約6000億円で買収したことに遡る。

(* 配信先のサイトでこの記事をお読みの方はこちらで本記事の図をご覧いただけます。http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/49053

 このWH等による原子力事業の工期の問題が粉飾会計の温床となり、それが2015年4月に発覚した。粉飾会計は、PC、テレビ、半導体にも拡大しており、同年7月、当時相談役だった西田氏を含む東芝の歴代3社長が辞任に追い込まれた。

 同年10月、東芝傘下のWHが、米エンジニアリング大手「シカゴ・ブリッジ・アンド・アイアン」(CB&I)から米原子力サービス会社「ストーン・アンド・ウェブスター」(S&W)を「0円」で買収した。WHとCB&Iは、2008年に契約を結び、共同で原発を4基建設していたが、仕様や納期の変更を巡って企業間で係争になっていた。そこで、WHは、CB&Iの子会社のS&Wを傘下に収めることにより、この係争を収めようとしたようだ。

 ところが、買収したS&Wが今回の巨額損失の火種になった。

 S&Wの当初の「のれん(資産価値)」は105億円と試算されていた。しかし、2016年12月にWHがS&Wの資産価値を再評価したところ、数千億円もの巨額損失が出ることが明らかになり、現時点では損失額が7000億円規模となった。つまり、7000億円もの負債を抱えていたS&Wを、CB&IからWHが「0円」で買ってしまったわけだ。

 原因としては、(1)WHがCB&Iに騙された、(2)WHが負債を隠していた、(3)東芝(の誰かが)負債を隠していたなどの可能性が考えられる。いずれにしても、東芝は、ババを掴まされたことになる。タダほど高いものはなかったのだ。

なぜ今まで分からなかったのか?

 問題は、なぜ、7000億円もの巨額損失が突如、発覚したかということである。

 東芝は、2015年に粉飾会計が明らかになったときも、WHの「のれん」に関する減損をなかなか発表しなかった。ところが日経ビジネス(2015年11月12日)にすっぱ抜かれたために、やむを得ず2015年11月17日にWHの減損3500億円を認め、2016年3月期に約2600億円の損失を計上した。