タコで“多幸”に! 進む完全養殖プロジェクト

切っても切れない日本人とタコの仲(後篇)

2017.01.27(Fri)漆原 次郎

 となれば、完全養殖の実現によりタコを安定的に量産できるようになることが、有効な打開策となる。

「マグロは近大が頑張った。なんとかしてタコも完全養殖を実現したい。事業化のめどがつくまで行きたい」。こう話すのは、宮城大学食産業学部教授の西川正純氏。マダコの完全養殖などを目指す産学連携プロジェクトの研究リーダーを務めている。

被災地や過疎地に養殖産業を

西川正純(にしかわ まさずみ)氏。公立宮城大学食産業学部教授。薬学博士。医学博士。1982年、大洋漁業(現マルハニチロ)入社。同社(1993年、マルハに社名変更)で中央研究所主管研究員や化成食品事業部主管課長などを務める。2005年より現職。現在は同学部長、大学院食産業学研究科長も兼任。専門分野は食品機能学、水産利用学、油化学。宮城県名取市の特産品「閖上(ゆりあげ)アカガイ」のブランド化や、南三陸地方で磯焼けを起こしたウニの養殖化などにも取り組む。

 プロジェクトでは、「築地銀だこ」を展開するホットランドを中心に、宮城大学、東北大学、東海大学、それに養殖業者のグルメイトが連携する。西川氏によると、その発端は2011年、宮城大学の西垣克学長とホットランドの佐瀬守男代表が面会した際、震災復興支援のために協力することで一致したことだ。2012年には包括連携協定も提携した。

 完全養殖実現でタコの供給不足が解消し、さらに養殖産業で被災地や過疎地域などが活性化すれば、大きな成果となる。

 ただし研究費は潤沢ではない。そこで、科学技術振興機構(JST)の事業に上記のプロジェクト体制で申請し、採択された。2016年3月までは「被災地におけるマダコ養殖技術の開発と産業創成」、その後は「マダコ完全養殖の高度食品加工技術の応用展開による地域産業創生」という課題名でプロジェクトが進んでいる。

 実際の研究は東北の「石巻・女川〜南三陸地域」、さらに2015年からは種苗生産に適した水温の場所を求め、熊本県上天草市の「天草地域」(上天草水産研究所)で行われている。2地域で、養殖から加工まで、さらにタコを利用した機能性食品事業などまで成功すれば、地方発“6次産業”のモデルにもなる。そのためには、やはり完全養殖を実現したい。

代謝を手がかりに「足りない何か」を探る

 浮遊する幼生タコを定着段階まで生かすことの、何が難しいのか。

「タコの生態がいまだ明らかでないのに加え、必要な栄養素として、何かが足りないのです。それを探索しています」

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