ゲノム編集は遺伝子組換えか? 世界的な争点に

「新しい育種技術」の可能性と課題(後篇)

2016.12.23(Fri)漆原 次郎
立川雅司(たちかわ まさし)氏。茨城大学農学部地域環境科学科教授。博士(農学)。1962年岐阜県生まれ。1985年、東京大学大学院社会学研究科修士課程中退。農林水産省中国農業試験場で勤務。1993年、米国ミシガン州立大学社会科学部社会学修士課程卒業。1996年より農林水産技術会議事務局、1998年より農業総合研究所(現・農林水産政策研究所)を経て、2007年、茨城大学農学部准教授。2010年より現職。

立川雅司氏(以下、敬称略) NBTを用いた作物が遺伝子組換え作物と見なされると、既存の遺伝子組換えに関する規制の適用を受けることになります。そのため、適用を受けるか否かが大きな課題として浮かび上がってきているのです。

 遺伝子組換え生物の国際取引に関する取り決めである「カルタヘナ議定書」が2000年に採択されたことを受けて、日本を含む多国が「カルタヘナ法」を施行しています。その中で「遺伝子組換え生物等」を、「異なる分類学上の科に属する生物の細胞を融合する技術」の利用により得られた核酸またはその複製物を有する生物と定義しています。

――つまり、法律の定義からすれば、生物の中に外来遺伝子が残されているかどうかが、遺伝子組換え生物か否かを判断するポイントになるわけですね。

立川 ええ。外来遺伝子がゲノム内に安定的に導入されていなければ、“非遺伝子組換え”の扱いになる可能性が高いため、産業側の期待が高まっているわけです。

欧米も日本も方針は不透明

――では、NBTを遺伝子組換え扱いするかどうかについて、世界の地域や国の状況はどうなっているのでしょうか。

立川 まず、欧州連合(EU)については、行政当局である欧州委員会が規制上の判断を示さないまま時間が経過している状況です。欧州委員会は、今後「法的解釈文書」を公表するとしていますが、公表が大幅に遅れていて、いまだ公表されていないのです。

 そのため、加盟国によっては独自の規制判断をする動きも出てきています。たとえば、ドイツなどでは、ゲノム編集技術に類似したオリゴヌクレオチド誘発突然変異導入技術(ODM:Oligonucleotide-Directed Mutagenesis)という方法で作った除草剤耐性ナタネについて、“非遺伝子組換え作物”だとする判断がありました。ただし、欧州委員会が今後、異なる判断をした場合はその効力が失われるという条件つきです。

――欧州委員会の判断が待たれている状況なのですね。

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