韓国の朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領と長年の知人である崔順実(チェ・スンシル=1956年生)氏を巡る数々のスキャンダルを捜査しているソウル中央地検の特別捜査本部が連日、財閥トップや経営陣を召喚している。
財閥は資金拠出を強要されたと「被害者」である点を強調する。だが、それだけではすまない事情もある。
2016年11月27日、特捜本部はサムスングループの広告代理店、第一企画(チェイルキフェク)の社長を参考人として召喚した。
この社長はグループ全体のスポーツ業務全体を統括しており、崔順実氏の姪が実質的に保有するスポーツ関連会社にサムスングループが16億ウォン(1円=10ウォン)を拠出した事情を追及した模様だ。
李健熙会長の次女の夫
この社長はただの社長ではない。韓国の有力新聞社のオーナー家出身で、サムスングループの李健熙(イ・ゴンヒ=1942年生)会長の次女の夫だ。オーナー家の人物を召喚することでサムスングループを圧迫する狙いもあると見られる。
検察の捜査の焦点は、財閥に集中している。特に標的となっているのがサムスングループだ。
検察は11月8日、サムスングループの中枢である未来戦略室などに強制捜査に入った。捜査陣が真っ先に駆けつけたのは張忠義(チャン・チュンギ=1954年生)未来戦略室社長の執務室だった。必要資料を押収したほか、韓国メディアによると「出国禁止措置」にした。
張忠義社長はサムスングループ全体の対外業務を取り仕切っている。病気に倒れる前、李健熙会長が時折、出勤すると、会長の執務室に入るのは3人だと言われた。
未来戦略室長を兼ねる崔志成(チェ・チソン=1951年生)副会長、会長の長男である李在鎔(イ・ジェヨン=1968年生)副会長と張忠義社長だ。そんなサムスングループの首脳中の首脳の1人が標的になったことはサムスングループを震撼させた。
検察は、11月18日には張忠義社長を召喚して長時間調査をしている。検察は何を狙っているのか。
検察の狙いは「第3者賄賂罪」
韓国では国会決議を経て12月2日にも、政治的な案件などを捜査する「特別検察官」が任命される。特別検察官が就任すると検察捜査は終了し、すべて引き継ぐことになる。
検察はそれまでに是が非でも、大統領を「賄賂罪」での共謀でも立件したいという意欲を見せている。
検察は11月20日、崔順実氏や2人の前青瓦台(大統領府)秘書官を「職権乱用」や「強要」などで起訴した。このとき、3人の罪の相当部分で大統領も「共謀関係だった」と明らかにした。