【第5回】
今、日本の「教育」が行き詰まっている。日本の高度成長を支えた、「正解」をいかに早く覚え、再現するかという従来の教育は、「答えのない時代」を迎えた今、うまくいかなくなった。日本の国際競争力を高める人材を育成する上で、障害となっているものは何か。21世紀の教育が目指すべき方向は何か。
本連載では、世界からトップクラスの人材が集まる米国、職業訓練を重視したドイツ、フィンランドの「考える教育」など、特色ある教育制度を取り入れている先進国の最新動向から、日本の教育改革の方向性を導き出す。
(前回の記事「大卒に特別な価値はない。世界教育動向と進む学歴インフレ」はこちら)
歴史あるイギリスのボーディング・スクール
世界の先進国では、どのようにしてエリートを育てているのか。
イギリスでは、ボーディング・スクールがその役割を担っています(図-7)。400~500年以上の歴史を持つ、全寮制の寄宿学校です。学費が高く、主に裕福な家庭の子供たちが入学し、集団生活を送っています。
イギリスの歴代首相19人を輩出したイートン・カレッジ、ウィンストン・チャーチルら7人の首相を生んだハーロー校、ラグビー校が有名です。
日本にも、戦前は旧制高等学校があり、特に一高(第一高等学校)は、政財界に数多くのリーダーを送り出しました。一高もやはり全寮制でした。学校だけでなく、寮の人間関係の中で揉まれることが、人格形成にとってきわめて重要なのです。
加えて、イギリスを初めとする欧米のボーディング・スクールは多国籍です。昔の一高のように、均質性の高い文化の中で育った似た者同士ではなく、さまざまな言語、文化的背景を持った学生同士が切磋琢磨し、グローバルマインドが育っていく環境があるのです。
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