人はほぼ毎日、何らかの食べものを食べている。総務省が2011年に実施した「社会生活基本調査」によると、日本人が1日に食事に費やす時間は平均1時間39分。かなり時間を食に割いているといえる。
では、人は日々どのように「食の意思決定」をしているのだろう。毎回の食事では、何が、あなたに「その食べもの」を選ばせているのだろうか。
こうした食の根本的な疑問をテーマに、前後篇で研究者に質問を投じている。応じてもらっているのは日本大学危機管理学部准教授の木村敦氏だ。「食の社会心理学」が研究分野の1つであり、とりわけ「食の環境」という外的要因が食の意思決定にどう影響しているのかを研究している。
前篇では、同じワインを出されても、異なる産地を言われると、一緒に提供された料理を食べる量が変わるといった、海外での先行研究の事例を紹介してもらった。
後篇では、木村氏が行ってきた研究の成果を聞くことにする。グラスの形が違うだけで、そのときに食べる量や、食事でのコミュニケーションのとり方が大きく変わるというのだ。どういうことだろう。
男性的・女性的イメージが食に制限をかける
――前篇では、食の意思決定は「一番おいしそう」や「お腹が空いているから」といった感覚的要因だけでなく、食の環境という外的要因の影響も受けるとの話でした。木村さんは、食の意思決定や外的要因について、どのように研究を進めてきたのでしょうか。
木村敦氏(以下、敬称略) 食品総合研究所という研究所にいたとき、社会心理学的な観点から研究している資料などを読んで興味を持ち、普段の食生活をどうしたら良くできるかという目的で研究を始めました。