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細胞はなぜ今のような仕組みになっているのだろうか。(写真はイメージ)

(文:冬木 糸一)

『生命、エネルギー、進化』
作者:ニック・レーン 翻訳:斉藤 隆央
出版社:みすず書房
発売日:2016-09-24

 本書『生命、エネルギー、進化』は『生命の跳躍』『ミトコンドリアが進化を決めた』のニック・レーンによる「生命の起源と来歴を語る」一冊だが、これが圧巻の内容である。

 前作までの内容を取り込みアップデートをかけた上で、生命の起源をめぐる問題に真っ向から挑み、多様な分野にまたがる議論を総括しながら、宇宙における生命の普遍的特性とまでいえる、説得力のある結論を導き出してみせる。

“どんな法則が、宇宙、星々、太陽、地球、そして生命そのものを生み出したのか? 同じ法則が、宇宙のどこかほかの場所でも生命を生み出すのだろうか? 異星の生命もわれわれとそう違わないのだろうか? そんな形而上学的疑問が、われわれを人間たらしめているものの核心にある。細胞の発見から350年ほど経った現在でも、われわれは、地球上の生命がなぜ今こうなっているのかを知らないのである。”

 細胞はなぜ今のような細胞なのか? どんな物理的要因が複雑な細胞を誕生させたのか? なぜ形態が複雑な生物は一度しか生じなかったのか? なぜほぼすべての真核生物に2つの性があるのだろう? なぜわれわれは老化したり、がんになったり、死んでしまうのか?