出光興産本社が入居する東京・丸の内の帝劇ビル(資料写真、出所:Wikipedia)

 石油元売り大手の出光興産と昭和シェル石油の合併をめぐる、出光経営陣と創業家の争いがヒートアップしている。

 今のところ双方が譲る気配はまったくないが、ここまで事態がこじれたのは、両社の社風があまりにも違いすぎることに加え、合併話そのものが、政府からの要請という少々不自然な形でスタートしたからである。同社をめぐる混乱は、政府の産業政策をめぐる根本的な課題を浮き彫りにしたともいえそうだ。

日本型経営の典型である出光

 出光興産と昭和シェル石油は2015年11月、合併に関する基本合意に達しており、2017年4月の合併期日に向け具体的な協議を進めようとしていた。状況が大きく変わったのは、今年6月に開催された出光興産の株主総会からである。出光の創業家は総会において、昭和シェル石油との合併に反対する方針であることを表明し、同社は大混乱に陥った。7月以降、創業家と経営陣が話し合いを続けてきたものの、議論は平行線のままとなっている。

 8月に入って創業家側はさらに攻勢を強めている。買収相手である昭和シェル石油の株式40万株を市場で買い付け、昭和シェル石油の株主にも名を連ねたからである。このままでは出光側が取得する昭和シェルの株式数が全体の3割を超えるため、公開買付以外に合併の道が閉ざされてしまうという仕組みだ。これは創業家側が絶対に合併を認めないという姿勢を強調したと捉えてよいだろう。

 では、出光創業家はなぜここまで頑なに合併に反対しているのだろうか。それは同社の社風と、これまで同社がたどってきた経緯が大きく関係している。