日本人選手のメダルラッシュに沸いたリオデジャネイロオリンピックが閉幕しました。競泳、体操、柔道、レスリング、卓球・・・。
逆転による金メダル獲得ラッシュや、霊長類最強女子のまさかの敗北など数多くのドラマが生まれ、テレビの前に釘付けの日々が続いた方も多いかと思います。
それにしても、メダルが取れても取れなくても、あの場所に立った選手たちのそれまでの努力を思うと、それだけで尊敬してしまうのは、私だけではないはず。
それと同時に、勝者と敗者がいる舞台である以上、努力は必ずしも報われるわけではないことを、痛感してしまいます。
“頑張っている自分”に酔ってない?
教育やスポーツの現場でよく使われる「努力は必ず報われる」というフレーズ。
努力を推奨するこのフレーズに、「努力は報われると思う人はダメですね。努力を努力だと思っている人は大体間違い」と異を唱えたのが、お笑い界の大御所、明石家さんまさん。努力に見返りを求めてはいけない、という真意が含まれていて、大きな話題になりました。
その発言にプロローグで触れているのが『努力不要論』(中野信子著、フォレスト社)。著者は、さんまさんの番組に出演しているので、ご存知の方も多いと思います。
サブタイトルは『脳科学が解く!「がんばってるのに報われない」と思ったら読む本』。刺激的なタイトルの書籍ですが、著者は「努力」を完全に否定しているわけではありません。
成果を出すために、目的を設定し、戦略を立て、実行する、というプロセスの大切さを説いており、そのため、努力すること自体に満足してしまう危険性を危惧しているのです。
そんな本書ですが、脳科学に基づいた専門的な解説書と思って手に取った方は肩透かしを食らうかもしれません。なぜなら、脳と努力の関係性をリンクするというより、社会情勢を踏まえた人生の在り方に重きを置いており、著者的にも実験的な意味合いが強い一冊だからです。