しかも、上院軍事委員会議長のカール・レビン上院議員(当時)が2011年の議会で指摘したように、C-27J輸送機、SH-60B哨戒ヘリ、 P-8A対潜哨戒機、THAADミサイルからは、中国製の「偽の部品」が発見されているという。要するに、米軍の装備には欠陥品なりウィルスが仕込まれた部品が組み込まれている懸念があるのである。そのため、おいそれと再生産することはできない。

 しかし、3Dプリンタならばこれらの問題を解決できる。まず、金型や製造ラインが不要なので、低コストで製造できる。また、前線で製造すれば、輸送における資金および時間的コストも圧縮できる。そしてサプライチェーンが自勢力内で完結するので、中国製の部品が紛れ込むこともなくなる。

 米軍が3Dプリンタの導入を積極的に進める第2の理由は、遠征作戦で大きな効果を発揮するからである。米軍は、アフガンやイラクでのゲリラ戦で装備の損傷が著しかったが、補修部品をいちいち米本土から製造して送らねばならない。現地では共食い整備をしなければならず、また、その生産と輸送は兵站を大きく圧迫した。その苦労の経験があるからこそ、3Dプリンタに着目しているのである。

防衛省はまったくの無関心

 翻って日本を見ると、防衛省はまったく3Dプリンタに関心がないようである。

 レールガンやステルス戦闘機のような、技術的に失敗するか、米国には死んでも追いつけないであろう技術には熱心だが、兵站には関心がないと見え、管見の限りでは軍用3Dプリンタの研究開発はまったくと言って良いほど行っていない。政治家も関心はない。むしろ、経産省の方がまだ熱心な節がある。3Dプリンタは日本初の技術であり、まだ米国に勝てる可能性がある技術にもかかわらずである。

 実際、防衛白書では、3Dプリンタについて2014年に初めて言及されたが、それは脚注であり、それも「(可能性は)依然として不透明」というものであった。2015年版も、その文章がコピペされていた。今年もおそらくコピペになると思われるが、本当に「依然として不透明」なのか、筆者は大いに疑問である。