夏到来。薄着の季節になると、「ダイエット」を始める人も多いことだろう。ダイエットとは、もともとは「日常の食事」を意味する言葉だが、いまでは「痩身」「減量」の意味で使われるほうが多い。
人びとがダイエットに励むのは体重が増えるからだ。では、なぜ体重は増えるのだろうか。エネルギーバランスのしくみを探ってみた。
人類はエネルギーを貯めておく動物
食べ過ぎると、太るのが心配になる。食べ物が脂肪になるのも不思議だ。
食べ物から供給される栄養素のうち、おもなエネルギー源は糖質、脂肪、たんぱく質からなる。糖質とは、炭水化物のうちでんぷんや糖類など消化されるものをいう。糖質は体内に吸収されると、グリコーゲンとして肝臓や筋肉に、あるいは脂肪に変換されて脂肪組織に蓄えられる。脂肪も脂肪組織に蓄えられ、また、たんぱく質は体をつくるたんぱく質の素材となる。
摂取したエネルギーの大半はすぐに使わずに脂肪として貯めておき、必要に応じて消費する。これは、生物が飢餓に備えて進化させた機能的なシステムだ。
生物の歴史を遡れば、食べ物にありつけるのはまれなことだった。餓死することもあっただろう。そこで、生物はエネルギー源が枯渇したときに備え、エネルギーを蓄える手段を身につけたのである。
脂肪は、重さあたりのエネルギーが糖質の2倍以上あるので、少ない量でたくさんのエネルギーを貯めておける。効率のよい脂肪を使って、エネルギーを蓄える機能を身につけたおかげで、次はいつ食べられるのかも分からない状況から、人類は生き延びることができた。
このように人類が繁栄を遂げられたのも、まさに脂肪のおかげなのである。脂肪はダイエットの敵と思うかもしれないが、むしろ私たちは脂肪に感謝しなければならないのかもしれない。