アニメや映画のキャラクターとして世界中で人気の高い「忍者」。そんな忍者が持ち歩いた携帯食は、現代にも通じるパワーフードだった。
5月に東京で開催された「第21回 国際食品素材/添加物展・会議(ifia JAPAN 2016)」における「忍者食」コーナーの報告と合わせて、忍者食の価値に迫ってみたい。
任務に携帯していた「兵糧丸」
急増する外国人観光客にとりわけ人気が高いのが、忍者だ。「忍者屋敷」を模した都内のレストランには、外国人観光客であふれているという。忍術を使い、影のように立ち回る姿に引きつけられるのは、日本人ばかりではないようだ。
時代劇でのイメージとは異なるが、もちろん忍者は実在していた。人目をさける忍者ゆえ、史料は少ない。だが、近年では忍者の学術研究が行われており、実態が明らかになってきている。
忍者の任務は、敵地に忍び込み、敵の情報を集めること。そのため、忍者は、日々、身体の修練に励んでいたという。
そんな忍者の食事はどうだったのかというと、普段の食事は普通の人と変わらなかったようだ。だが、忍者としての任務に出るときは、強飯や梅干しのほか、「兵糧丸(ひょうろうがん)」という独自の携帯食を持ち歩いていたという。
兵糧丸は、忍者の漫画でも、「1つ食べれば1日動き回れる」ほどカロリーが高いとして登場する食料である。実際の記録に残る兵糧丸は、地域により材料やレシピに違いはあるが、おおむねそば粉や米、ハト麦などの穀物の粉末に、ゴマや松の実、ハチミツ、魚粉などを加えて丸めたものだった。
穀物は炭水化物が豊富にあるし、ゴマや松の実などの木の実は脂質やミネラルを含む。魚粉はタンパク質が豊富である。兵糧丸は、保存性がよくカロリーが高いだけでなく、栄養素もバランスよく含んでいた。現代でいえば、エネルギーバーやシリアルバーのようなバランス栄養食だったのである。