「塩分を摂りすぎると高血圧になる」ということは誰でも知っていることだろう。かつては減塩がずいぶん取り沙汰されたが、いまはどうなのだろうか。
「食塩」と「高血圧」の関連は?
脂肪や糖などの摂りすぎを気にする人が増えている一方、最近、かつてほど減塩が騒がれないのは、「塩分イコール高血圧のもと」が人々に定着し、減塩が浸透しているからだろう。
この背景には、1970年代の減塩ブームがある。「塩は悪者」と刷り込まれて、しょっぱいものを食べるとなんとなく罪悪感にかられる。そんな人も多いことだろう。
減塩ブームは、まず1960年代に米国で起きた。きっかけは、1961年に米国のブルックヘブン国立研究所のルイス・ダールが疫学調査で、食塩摂取量と高血圧の発症率に相関があることを示唆したことである(図参照)。減塩ブームは、日本にも広がり、食塩摂取量の多かった秋田県や長野県などで減塩運動が行われたことはよく知られている。
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しかし、ダールの疫学調査の後、ほかの科学者によりさまざまな動物実験や臨床調査が行われたが、再現性のある結果が得られなかった。科学的な根拠が不明瞭なまま、「塩分を摂りすぎると高血圧になる」ということが、定説化した。減塩の必要性が明確なのは、腎臓疾患など一部の人のみである。
年々少なくなる日本人の食塩摂取量
たしかに日本人の食塩摂取量は多く、戦前は1日に20グラム近くも食塩を取っていたと考えられる。減塩ブームのころの、1975年の日本人の食塩摂取量は男女とも1日あたり13~14グラムだったが、年々減少し、2014年の国民健康栄養調査によれば、成人の食塩摂取量は男性10.9グラム、女性は9.2グラムだった(図参照)。
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