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テヅルモヅルの一種(出所:Wikimedia Commons

(文:柴藤 亮介)

「テヅルモヅル」という生物をご存知だろうか。体の中心から五本の腕を伸ばし、その各々の腕を枝分かれさせ、まるで触手のようにうねうねと動かしながら海水中のプランクトンを捕獲し、それらを栄養源として生息している動物だ。

 腕を広げると、大きなものでは1メートルを超える圧倒的な存在感を持つモヅルもいるようだ。その様子にちなんで、一部の種は学名にギリシャ神話の「ゴルゴン」を冠している。

 見た目・形ともに異彩を放つこのテヅルモヅルだが、研究者の数が限られていることもあり、いまだ生殖発生や生活史などの基本的な生態すら明らかにされていない。

 本書『深海生物テヅルモヅルの謎を追え!』は、そんな謎多きテヅルモヅルを研究する茨城大学の岡西政典助教が綴る研究日誌である。

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 珍しい生き物の研究者と聞くと、中高生時代からマニアックな知識を持ちピンポイントで研究室を選んだ人というイメージを持つかもしれないが、著者はそうではなかった。大学初年度はバイトとサークルに明け暮れ、試験前には友達同士で教え合いながら、低空飛行で定期試験を乗り越えていた。また卒業研究の時には、うどんを作り続けて30年の師匠に「うどんって中華ですかぁ?」と尋ねるに等しい質問を、恩師の先生にしていたそうだ。