そして、最後の3つ目のIT企業の挑戦はリスクの大きさです。
死の谷にはまるリスクはIT産業の比ではない
ベンチャー企業が、技術や事業アイデアを現金化するまでの長丁場のプロセスで、開発に必要な運転資金が底をついてしまい商業化レースから脱落を余儀なくされること、つまり倒産してしまう現象は、「Valley of Death (死の谷)」という言葉で表現されます(図23)。

1つ目のIT企業の挑戦で見たように、エネルギー技術の商業化には、ITに比べて、より大きな資金とより長い時間を要します。つまり、エネルギーベンチャー企業は、一般的にこの死の谷に陥るリスクが、ITベンチャー企業以上に大きくなります。
また、2つ目のIT企業の挑戦として、クリーンエネルギー事業は政策による影響を受けると言いましたが、商業化期間が長くなるということは、期間中に政策が変更されるリスクもより高まることを意味します。
せっかく素晴らしい技術を開発しても、市場に投入する準備ができる前に政策が変わってしまい、需要がなくなってしまうリスクも抱えています。
総じて、クリーンエネルギー技術の商業化は、ITの商品化に比べて、よりリスクが大きいことが分かります。
現在、多くの大手IT企業がクリーンエネルギー技術の開発、商業化に積極的に取り組んでいますが、彼らが慣れ親しんだITの商品化との「違い」をいかに克服し、ITとETの融合を成し遂げられるかが、技術革新の成功のカギを握っていると言えます。