2つ目のIT企業の挑戦は、クリーンエネルギー技術開発は政治や政策の影響を大きく受けることです。

政治と政策の影響をもろに受けるクリーンエネルギー

 例えばフィード・イン・タリフという制度があります。これは、太陽光発電などリニューアブル発電を普及させる政策の1つです。この制度では、電力会社がリニューアブル発電に対し、一定期間、固定価格で全量の電力の買い取りを保証します。

 フィード・イン・タリフ制度が導入されますと、太陽光発電を検討している人は、将来一定期間、決まった金額で発電したソーラー電力を電力会社に販売できることが計算できますので、初期投資額の回収の目途が立てやすくなり、太陽光パネル購入の後押しをします。

 EU連合25カ国中18カ国がフィード・イン・タリフ制度を採用しているヨーロッパを中心に*15太陽光発電の導入が大きく伸びたことは、図15で既に紹介した通りです。

 フィード・イン・タリフ制度の買い取り価格の原資は、原則的にすべての電力ユーザーで負担することになります。

 従って、太陽光発電を持っていない人は太陽光を持っている人の太陽光電力の買い取り価格の一部を負担していることになり、「それだったら、うちも太陽光パネルを設置しよう」という話になるのです。

インセンティブが失われれば一気に市場は縮小へ

 その結果、太陽光パネルの需要が高まり、メーカーは設備を増強し、技術開発も活発化させることになります。政策によってクリーンエネルギー技術開発が促進される例です。

 しかし、政権が代わることによってグリーン路線が変更されたり、世の中の景気が悪化し固定費買い取り価格の均一負担が受け入れらくなったりして、フィード・イン・タリフ制度が廃止された場合はどうでしょう。

 そうすると、太陽光パネルを購入するインセンティブが薄れてしまい、太陽光発電設備の需要も減ってしまうでしょう。

 結果として、太陽光パネルメーカーの設備投資計画や技術開発にも大きな影響を与えます。この様な政策の「ぶれ」による事業への影響は、IT産業には見られません。

*15Wikipedia - 固定価格買い取り制度