原油市場が再び弱気相場入りした。7月22日のWTI原油先物価格は、米エネルギー省が発表した週間石油在庫統計で「原油在庫が増加し、引き続き5年間の季節平均を上回った」ことが明らかになり、3カ月半ぶりに1バレル=50ドルを下回った。翌23日も4カ月ぶりに同48ドル台に続落した。
7月17日、米資源開発サービス大手のベーカーヒューズが「米国の稼働中のリグ数が7基減少した」と発表したにもかかわらず、原油価格は反転しなかった。シェールオイル企業が少々減産したとしても石油輸出国機構(OPEC)の増産傾向が止まらない。これに中国需要への不安が加わり、世界的な供給過剰状態は一向に改善しないとの認識が広がり、原油価格の下押し圧力が高まっているためである。
サウジが主導するOPECの「暴走」
このような状況下でも、OPEC加盟国関係者は、「今月に入っての原油価格の下落は短期的なもので、世界経済の成長で価格上昇が見込めるため、市場シェア確保のために生産量を高水準で維持するという機構の方針に変更はない」と述べた(7月22日付ロイター)という。
筆者はかねてからOPECの見通しに対し違和感を抱いていたが、7月18日にバーレーンのエネルギー戦略研究所が発表した報告書の内容は衝撃的だった。その内容をかいつまんで言えば、「サウジアラビアは制裁解除後のイランの石油生産拡大を妨害するため、過剰な量の原油を世界市場に供給することで原油価格下落の要因を無理やり作り出そうとしている」というものである。この推測が正しいとすれば、サウジアラビア関係者がしきりに「来年の原油需要は拡大する」と強調している理由が分かるような気がする。