民主党代表選が大詰めを迎え、菅直人首相VS小沢一郎前幹事長の論戦が白熱化している。両氏とも経済政策では疑問点が多いのだが、論戦を通じて意外な収穫が1つだけあった。それは、小沢氏が「為替政策」に関して正論を展開したことである。

民主党代表選、「首相は菅氏」60%以上 各紙調査

菅首相VS小沢前幹事長、論戦が白熱化〔AFPBB News

 もっぱら「市場介入」の有無に関心を集めるマスコミは詳しく取り上げなかったが、次期首相になるかもしれない小沢氏の「正論」は押さえておいた方がいいだろう。

 本論の前に、経済運営に関する両氏の主張を整理したい。菅氏のスローガン「一に雇用、二に雇用」には、「本末転倒」の感を否めない。雇用確保は確かに重要だが、それで経済が良くなるわけではない。順番は逆で、経済成長を通じて雇用は確保されるものだ。

 一方、小沢氏はマニフェスト(政権公約)の厳守を訴えるが、その財源確保は説得力に乏しい。歳出構造の大胆な見直しが本当にできるのか。また、政府資産の証券化で資金を捻出する案も披露したが、これは本来は債務返済に充当するのが筋。この資金を支出に使えば、政府債務は膨れ上がるだけだろう。

小沢氏「円高を活用して海外の資源に大きな投資を」

 両氏の経済政策は総じて期待できないものの、円高問題をめぐる論戦(2010年9月3日のNHK番組)で小沢氏が市場関係者の賛同を得る発言があったのは唯一の救いだ。その語録を紹介してみよう。

 (1)「円が高くなるのは、中長期的には国にとっては決して悪いことではない」

 (2)「円高の被害が大きいのは中小・零細企業。その意味で急激な円高は阻止すべき」

 (3)「ただ、『市場介入』は、他国が円高を容認していると、膨大な資金が必要で、単独ではなかなか効果が出ない」

 (4)「例えば円高を活用して海外の資源に大きな投資をする。今、資源競争で中国などに負けている。円高とは(対外)投資しやすいことで、それを積極的にやることが急激な円高の抑制に効果がある」

 (5)「日本は外需頼みで、景気は米中に支えられてきた。このため、内需で一定の成長が保てるよう経済構造を変える必要がある」