カナダ・トロントで開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議は、首脳宣言で「先進国は2013年までに財政赤字を半減させる」との目標を打ち出した。但し、日本はこの目標から例外的に除外された。ギリシャ債務危機を契機に、今や「財政緊縮」は国際的な風潮となっている。そんな中で、日本だけがこの流れから孤立した格好ではある。
但し、焦る必要はない。むしろ「余裕ある孤立」を最大限に活かして、地道に財政の健全化に取り組める、と受け止めるべきだろう。
危機感を煽るマスコミ論調
日本のマスコミは、国際的な枠組みから逸脱することを極端に嫌がる。特に今回のように「財政再建」という金科玉条が掲げられたとなれば「日本も遅れるべからず」との短絡的な主張が横行しやすい。実際に、日経新聞は6月28日付夕刊の一面で、さっそく「日本、欧米から置き去り」と見出しを掲げ、危機感を煽る論調を展開した。
重要なのは、なぜ日本が除外されたのかをきちんと把握すること。その上で日本が何をすべきか、を冷静に考えることだ。
国内総生産(GDP)に対する日本の政府債務残高が突出して高いのは周知の事実だ。
財務省の資料によると、2010年の比率は197.2%と空前の規模に達し、先進国で最悪だ。それでも削減目標を課せられないのは、国債の大半が国内で消化され、財政のリスクプレミアムが発生しにくいためだ。
2009年11月20日付当コラム「日本が国債のツナミにのみ込まれない理由」で解説したように、日本では国債の95%程度を国内機関投資家が安定保有している。
それでも、日本の金利は低下する
これまた自虐的に新聞論調では「ギリシャの次は日本」などと騒いでいるが、家計の預金が金融機関を通じて国債に回るホームバイアスが強力な「防波堤」として機能している。このことがG20でも認められたのだ。
この防波堤は、いまなお盤石である。日銀の「資金循環統計」によると、2010年3月末の家計の現金・預金残高は798兆円となり、前年比1.5%増加した。増加は4年連続。つまり、防波堤は一段と堅牢さを増したということになる。