日銀で51歳の理事が誕生した。一般企業で言えば「取締役」に相当するポストだ。日本の上場企業の役員の平均年齢は約59歳。序列社会の日銀にしてみれば「異例の大抜擢人事」と言っても差し支えないだろう。

 天下りポストの減少、バブル世代の滞留など、人事上の難問を抱える中で、ついに、日銀は脱・年功序列に踏み出したのかもしれない。(文中敬称略)

1981年入行組から理事に大抜擢

 日銀マンにとって出世競争の最終ゴールは、もちろん、総裁・副総裁だ。しかし、国会同意人事であるこのポストは、個人の資質や努力とは無関係に政治のパワーバランスで決まってしまう。そこで、現実的な目標となるのが、取締役相当の理事ポストだ。椅子は全部で6つ。任期は4年なので、なかなかの狭き門だ。

 日銀は、5月に退任した理事・水野創の後任に金融機構局長の田中洋樹(81年入行)、6月に退任した理事・堀井昭成の後任に企画局長の雨宮正佳(79年入行)を任命した。

 筆者は丁度1年前の「来年は81年入行組から理事誕生?」で予告済みだ。「見事的中!」と自慢したいところだが、実際には、大いに意表をつかれた。

「白川総裁・渡辺副総裁案」を提示、日銀人事

民主党は当時の副総裁の武藤敏郎の総裁昇格を認めないなど、財務省出身者の人事案件をことごとく拒否した〔AFPBB News

 日銀の理事の椅子6つのうち1つは、伝統的に「財務省枠」としてリザーブされてきた。しかし民主党には、2008年春の日銀総裁・副総裁人事で、財務省出身者の就任をことごとく拒否して、3週間もの日銀総裁不在という異常事態を招いた前科がある。民主党が政権の座に就けば、財務省の理事枠は消滅し、6席全てに日銀出身者が座れるようになる──というのが、2009年夏の時点での大方の予想だった。

 ところが、民主党は政権の座に就くと官僚機構との対決姿勢を弱め、「官僚の中の官僚」と呼ばれた元大蔵次官の斎藤次郎を日本郵政社長に起用するなど、現実路線に舵を切った。もはや、民主党は2010年8月に交代時期を迎える日銀理事の財務省枠などには関心がないらしく、存続との見方が支配的だ。