長期金利が一時1.5%近くまで上昇した。11月16日付「日本を襲う国債のツナミ」(英紙フィナンシャル・タイムズ=FT)でも指摘されたように、外資系ファンドなどの売り仕掛けによるものだ。しかし、発行残高の累増を理由に財政破綻懸念をあおり、国債を空売りする「ガイジン」は、これまでのところ連戦連敗。今回も、1.5%手前であっさり、跳ね返された。そして、恐らく、今後も勝ち目は薄いと見ている。
FTの解説記事は、財政危機を煽る方向の見出しであり、それ自体は政府・与党に対する警鐘として有意義ではある。確かに、日本の財政赤字は深刻な状態だ。しかし、日本には、財政赤字が膨らんでも金利が上がりにくい特殊なメカニズムが働いている。警報は出ているものの、実際には大して潮位は上がらず、国債のツナミにのみ込まれる心配は、当面無い。その理由を可能な限り、平易に解説しよう。
国債増発、家計が受け皿に
財政破綻懸念は今日に始まったことではない。日本では1980年代後半のバブル崩壊以降、度重なる財政出動で国債発行残高は増大の一途をたどっている。
経済理論に当てはめれば、モノ(国債)の供給が増えると、価格は下がる(金利は上昇)はずだ。ところが、この間、長期金利はほぼ一貫して下がり続けてきた。これは、国債は増発(供給増)されたが、それ以上に、それを買うお金も増えた(需要増)ことを意味する。と言っても、お金が宙から降って湧いてきたわけではない。
企業の資金需要が低迷する一方で、家計部門の資金余剰が急速に強まっていったのだ。バブルの崩壊によって日本経済の将来に対する楽観論は大きく後退した。景気先行きに慎重になった企業は設備投資を抑制気味にし、なるべく借金を増やさないようにした。一方で、家計部門は将来の生活に不安を覚え、雇用情勢も厳しさを増したことから貯蓄を積み上げることになった。