もっとも、「最初のうちは戸惑いを隠せない様子の学生も少なからずいた」とネウィン校長が振り返る通り、点呼やランニングを欠かさず規律を重視する軍隊のような厳しい指導にはじめからすべての生徒がついてこられたわけではない。
だが、「座学を終え、暑い中で重機を操作したり、電柱に上ったりする実習が始まる頃には、生徒たち自身が体力と精神力を鍛える必要性を自覚し、訓練にも身が入ってきた」と続けるネウィン校長の表情からは、手応えと自信が確かに伝わってくる。
そして、その横顔を見ながら、「こちらが感心するほど熱心で生徒思い。誠実で実直な人柄」だと微笑む国際事業本部技術部の琴崎馨次長のまなざしにもまた、校長への信頼感が溢れている。
「現場は生き物」
午後1時。ヤンゴン港に面した大通りは、乗用車やコンテナや建設資材を運ぶ大型トラックが連なり、活気に満ちていた。建設ラッシュ真っ只中のこの街では、市内のいたるところで建設工事を見掛ける。
特にこの辺りは、通り沿いに建設中のビルが並び、レンガを肩にかついだ男たちが土ぼこりの中を動き回ったりしており雑然としている。数カ月後には、今、需要が右肩上がりのコンドミニアムがずらりと建ち並ぶのだろう。
そんなビルの1つで、サクラ・インセインの第1期生たちが現場OJT訓練を行っている。2階部分に上がると、ちょうど作業服にヘルメット姿の学生たちが4人ずつ5列に並んで昼礼を始めるところだった。
作業を開始する前には、朝と昼、必ずこうして集まり、点呼を受けたり、作業の手順を復唱したり、腰のベルトから下げた工具袋の中身を確認するという。金属音やモーターのうなり音、そして通りを走る車のクラクションが入り混じって騒然とした雰囲気の中で、この一角だけ空気がピンと張り詰めている。
昼礼の後、前出の琴崎さんと人材開発部施工技術支援チームの工藤直記チームリーダーがビルを案内してくれた。