こうした状況を受け、日本はこれまで電力分野でもさまざまな協力を行ってきた。
古くは、戦後賠償の第1号案件として両国関係の金字塔ともなっているバルーチャン水力発電所の整備を日本工営が手掛けたのをはじめ、最近ではニュージェックと関西電力が「電力開発計画プログラム形成準備調査」を通じて電力マスタープランの策定を支援したり、中部電力がヤンゴン市配電網の整備について調査を行ったりしている。
さらに、中部電力は現在、日本工営と共に地方主要都市における配電網整備計画の策定調査を実施中だ。しかし、電力政策に必要なのは発電量の拡大だけではない。冒頭のような痛ましい事故を1件でも減らすには、正しい知識を持った技術者や技能者の育成が欠かせない。
この国の明日を担う人材を育てるべく奮闘する人々に出会った。
三位一体の教育
スーレーパゴダ寺院が黄金色に輝くダウンタウンから北へ1時間ほど車を走らせたインセイン区にその学校はある。
「サクラ・インセイン テクニカルコース」。緑濃い木々に囲まれ、赤レンガの壁にアーチ状の白い窓枠が印象的な「ミャンマーAGTI協会」の建物を見ながら敷地を奥へ進むと左手に表れる平屋建てのクリーム色の建物が、それだ。演習用の灰色の電柱がにょきにょきと空に伸びているのが目を引く。
ミャンマーAGTI協会は、工学系の専門学校であるガバメント・テクニカル・インスティテュート(GTI)を長年運営してきた組織である。
かつては全国10カ所でGTIを展開していたこともあるが、1988年に発生した民主化運動を機に学生を警戒する軍事政権が高等教育機関を次々と閉鎖する中、GTIもすべて閉鎖を余儀なくされた。
以来、産業界で役立つ知識と技能を備えた職業教育の場の再開を切望してきた同協会にとって、サクラ・インセインは、30年越しの夢がようやく形になった学校なのだ。