5月2日、草野公民館駐車場でカメラ等の準備をして、まだ少し早いかもしれないけどクマガイソウの様子を見に行こうかと考えているところへ、申し合わせたかのように知人から「クマガイソウが咲いた」の電話を受けた。
飯舘の春、クマガイソウの咲く林
福島でクマガイソウといえば福島市水原の群生地が有名で、毎春の開花時期には「クマガイソウの里まつり」が開催され多くの来訪者を集めるが、飯舘村にも数十株のクマガイソウが杉林の中に小さな群落をかたちづくっている場所がある。
絶滅危惧II類に指定されているクマガイソウは生育環境にわがままな植物で、除染で地面に積もった落ち葉が除去されたり、日差しや風をさえぎる杉が伐採されれば、おそらく枯死してしまうだろう。
このつつましやかな群生が失われてしまうことを危惧していたが、どうにか除染の範囲を外れ、今春もその独特の容姿を見ることができた。
知らせてくれた知人宅では昨年のうちに住宅除染を終えた。8月に始まって11~12月までかかったそうである。
これだけ時間をかけた作業は元請のゼネコンには嫌われるが、おかげで除染後に環境省が行う線量チェックには一発合格。“通常の”手順に沿って除染が進められた近隣の住宅では、検査をパスできず2回も3回も除染を繰り返す家もあったらしい。
4月の終わりごろから、春は一気にやって来る。草木の芽吹きがもこもこと、日ごとに山を盛り上げる。冬の間むき出しだった人家が、その厚みの中に包み込まれていくようだ。
昨年クマガイソウを撮ったのは5月17日だった。今年は桜も足が速い。駆け足でやって来て駆け足で過ぎていった。飯舘村では例年ならまだ十分桜の見頃と言えるゴールデンウイークが、すでに八重桜の季節になっていた。