「私の政治生命の全てを懸けて頑張りたい」――。2010年9月4日、東京・新宿駅西口で行われた民主党代表選の立会演説会で、小沢一郎前幹事長は気迫をみなぎらせ、珍しく派手な身振りを交えながら熱弁を振るっていた。「最後の闘い」の覚悟が、ひしひしと伝わってきた。

炎天下の東京・新宿で激突、小沢氏VS菅氏(2010年9月6日民主党代表選の立会演説会、筆者撮影)

 この日、東京は最高気温が35度を超える猛暑日。白いシャツ姿の菅直人首相は腕まくりして「元気な経済を取り戻すキーワードは1に雇用、2に雇用、3に雇用」と訴え、雇用創出を前面に押し出した。また、「カネや地盤がなくても志があれば、総理大臣になれる例をつくった」と自賛しながら、小沢氏のアキレス腱である「政治とカネ」の問題を敢えて取り上げた。

 一方、ダークスーツを着込んだ小沢氏は、炎天下でも上着を脱ごうとしない。自らの「忍耐」とサラリーマンへの「共感」をアピールする戦術なのだろうか。菅政権が2011年度予算編成で歳出一律10%カットを決めたことに対し、「自民党政権時代からずっと続いてきた官僚主導のやり方」と厳しい批判を展開した。

 また足下の円高・株安を意識して、小沢氏は「財政出動の小出しでは本当の効果は得られない。(2010年度予算の予備費など)2兆円を直ちに執行する」と公約。演説の随所に「経済の小沢」が盛り込まれ、周到な準備をうかがわせた。

「負ける喧嘩」をしなかった小沢氏だが・・・

 筆者にとって、小沢氏の出馬は意外だった。強面の外見に反して慎重な性格とされ、「負ける喧嘩」をしないからこそ幾多の政争に打ち勝ち、40年以上も永田町で生き残り続けてきたからだ。

 しかし小沢氏にとって、今回は「負けるかもしれない喧嘩」である。菅、小沢両氏のどちらが勝つのか――。世論調査では菅氏優勢だが、民主党がそのトップを決める選挙である。9月14日投開票のギリギリまで激戦が続くだろう。

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