2010年9月1日、JBpressは政治コーナー「JBpressが注目する日本の政治家30人」を開設した。国家全体の未来を見据えて国民に奉仕する「ステーツマン」が現れ、日本の政治を再生してほしいと願うからである。

 2010年8月31日、直接対決の回避も憶測されていた民主党代表選だが、結局は菅直人首相、小沢一郎前幹事長ともに出馬を表明した。円高が進んでも株価が急落しても、「国民不在」で党内抗争に明け暮れる民主党。一体、「国民の生活が第一。」はどこへ行ってしまったのか。

 2009年9月16日、戦後ほぼ一貫して政権を担当してきた自民党が下野し、民主党中心の鳩山由紀夫連立政権が誕生すると、「期待」という名の漠然とした「空気」が日本列島に充満した。この国に蔓延している閉塞感を打破してくれるのではないか――。

 ところが、それから1年も経たずに期待は消え、失望がそれに取って代わった。米軍普天間基地をめぐる迷走や「政治とカネ」の問題が批判を浴び、鳩山首相は小沢幹事長とともに退陣を余儀なくされた。鳴り物入りのマニフェスト(政権公約)も財源不足を露呈して、政権交代直後から不履行が相次いでいる。

「小鳩よりマシ」という「空気」がつくった菅政権

 2010年6月8日、鳩山首相辞任後の民主党代表選で大勝した菅氏が首相に就くと、内閣支持率は劇的なV字回復を示した。その時、日本の至る所で「小鳩体制よりはマシ」という「空気」が流れていた。

 自信を得た菅首相は、制度設計も不十分なまま「腰だめ」というべき「消費税10%」を掲げて参院選に突入した。すると、有権者の間では「罰を与えるべきだ」という「空気」が強まり、民主党は予想以上の大敗を喫する。自民党時代のねじれ国会の再現となり、菅政権は一気に弱体化した。

 真夏に円高が進んでも菅政権は有効な対策を打てず、株価は値下がりを続けている。しかし、民主党代表選で小沢氏が出馬を表明すると、菅内閣の支持率は急上昇。「首相に相応しい人物」の質問では、菅氏が小沢氏を数倍も上回った。

 世論は参院選で菅首相の力量に大きな疑問符を付けたが、今度は「小沢氏よりマシ」「首相をコロコロ代えてはいけない」という「空気」が内閣支持率を押し上げたわけだ。一方、谷垣禎一総裁の率いる野党・自民党は「空気」を読むばかりで、反転攻勢のきっかけを見つけられない。