2015年4月20日、韓国の李完九(イ・ワング=1950年生)首相は外遊でペルー滞在中の朴槿恵(パク・クネ=1952年生)大統領に辞意を表明した。首相を追い詰めたのは、9日に自殺した建設会社会長の「怨念の暴露メモ」だった。
「真実は墓場まで持っていく」。政財界を揺るがすスキャンダルの渦中の人物が自殺する時、こんな言葉を残すことが多い。
ところが、今回はまったく逆だった。記者に電話して50分にわたってカネを渡した人物を実名で明らかにし、さらに、現職首相らの名前を書いた告発メモをポケットに残して自殺したのだ。
この中に、李完九首相の名前もあった。
韓国の政財界は、1人の建設会社会長の自殺で大揺れだ。
2015年4月9日、韓国の建設会社、京南(キョンナム)企業の成完鍾(ソン・ワンジョン=1951年生)会長がソウルの山中で死体で見つかった。
疑惑の建設会社会長が残した「怨念の暴露メモ」
「成完鍾自殺」は、政財界、メディアを震撼させた。
事の発端は、李完九首相が3月初めに開いた緊急記者会見だった。李完九首相は、「不正撲滅」を宣言した。これを機に、ポスコ建設をはじめ、不正資金作りをしていたと見られる企業に対する検察当局の強制捜査が続いていた。
韓国メディアは、標的を李明博(イ・ミョンバク=1941年生)政権と近かった企業や人物と報じ、捜査はどんどん拡大していた。