「これこそ不正根絶の決定打だ」「韓国版禁酒法だ」――。韓国で国会を通過した不正禁止法を巡って、メディアや官界、産業界が大騒ぎだ。一体その内容とはどんなものなのか。
2015年3月3日、韓国の国会は大きな論争を呼んでいた1本の法案を通過させた。在籍議員247人中、賛成228人という圧倒的な票決だった。
与党も野党もそろって賛成した法案だったが、何とも奇妙だった。法案通過後、与野党の幹部ともに何とも複雑な表情で「必要な措置があれば法施行までに・・・」などと、どうも歯切れが悪いのだ。
3月4日付の「朝鮮日報」や「中央日報」は、違憲の可能性があることを十分に知りながら法案を通過させたなどとして国会を強く批判した。
「違憲」の可能性がある法案とは一体何なのか。
韓国を騒がす「金英蘭(キム・ヨンラン)法」とは
3月3日に国会を通過したのは、「不正請託および金品などの授受禁止法」という名称だ。内容はこの法律の名称通りで、公務員などに対する不正な請託を禁じるものだ。
もちろん、韓国にも、公務員などに金品を渡して不正な請託をすることは禁じられている。贈収賄罪だ。では、なぜ、今になってこんな新しい法律ができたのか。そして、それがなぜ「違憲」の可能性があるというのか。
そもそもこの法律とはどんな内容なのか。
韓国では、この法律を一般的には「金英蘭(キム・ヨンラン)法」と呼ぶ。この法律を最初に発議した人物の名前が由来だ。
金英蘭氏は1956年生まれの法律家だ。ソウル大法学部在学中に司法試験に合格し、判事になった。夫も司法試験を首席で合格して検事になり、法曹界では秀才法律家夫婦として知られていた。金英蘭氏は女性法曹人の草分けの1人として活躍したが、一般社会で一躍脚光を浴びたのは2004年のことだ。この年、40代で女性初の大法院(最高裁判所に相当)の判事になったのだ。
判事の序列から見れば、異例の「飛び級出世」だった。盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権時代には女性法相も誕生しており、法曹界での女性の活躍が相次いだ時期だった。