そして、それら非軍事的諸活動のために、航海用設備や施設、緊急避難施設、捜索救難用施設なども建設されることになることが明らかにされた。

中国海警や公船を配して「中国の海」を拡大

 もちろん、南シナ海に続々と誕生する中国人工島が、中国海軍を中心とする軍事拠点として利用されることは当然である。ただし、それらの人工島に非軍事的な民間施設が多数建設されることにより、人工島は単なる軍事施設ではなくなることになる。したがって人工島には海軍施設が存在することになるものの、人工島周辺海域の警備は第一義的には人民解放軍ではなく「中国海警(China Coast Guard)」が任じることになる。

 中国海警は法執行機関であるとはいうものの“第2海軍”として位置づけられている。実際に中国海警の巡視船は質量ともに強化され続けており、第5軍と位置づけられている「アメリカ沿岸警備隊」を凌駕して“世界最強”の沿岸警備隊になりつつあるとアメリカ海軍では警戒を強めている。

 しかしながら、中国海警はあくまで法執行機関である以上、中国海警の公船に米海軍や自衛隊の軍艦が先制的にアクションを起こすことは絶対に避けねばならない(たとえ防御的攻撃をなしても、軍艦による“非軍艦”に対する先制攻撃となってしまう)。

 したがって、人工島の“運用”が開始され、中国海警による警戒活動が実施されると、たとえ人民解放軍艦艇や航空機が人工島を本拠地にしていても、南シナ海周辺諸国やアメリカなどの軍艦は、中国人工島周辺海域に接近することをためらわなければならない状況となってしまうのである。

 そして、尖閣周辺海域のように人工島周辺海域にも中国海警その他の中国公船や民間船が常時姿を見せつつある状況を続けることにより、名実ともに「中国の海」は拡大していくのである。