小保方氏、STAP細胞論文撤回に同意

〔「STAP細胞」論文問題について都内で開かれた記者会見で謝罪する理化学研究所の関係者ら(2014年4月1日日)AFPBB News

 前回お話した「試験管奴隷」(ピペドなど様々なジャーゴンがあるようですが)的な大学院生やポスト・ドクトラル・フェローのあり方は、決して元来あるべき高等学術の姿ではありません。

 残念ながら現実の日本にはそれに近い形が少なからず存在している可能性があります。

 どうすれば、そうした状態を解消することができるでしょうか?

 「学歴ロンダリング」や「エア学位」、力に乏しい研究者の卵が「生活防衛」のために不正を当たり前と思うような状況をどのようにして根絶していくことが可能になるか?

 科学研究の不正を根治する本質的な対案を、具体例を踏まえながら考えてみたいと思います。

マーク・スペクター事件から考える

 今日はエイプリルフールですので「科学での嘘のつき方」、特に「大科学者が騙される瞬間」について具体的に考えてみたいと思います。米国で1980年代に起きた有名な研究不正事例に即して検討してみましょう。

 1981年、米コーネル大学の大学院生だったマーク・スペクター(Mark Specter、1955-)は指導教官のエフライム・ラッカー(Efraim Racker、1913-1991)の指導のもと、ガン細胞発生のメカニズムを明らかにしたとして次々に論文を発表、瞬間沸騰的な反響を呼びます。

 しかし、データは不自然で追試はことごとく失敗・・・。どこかにあったような話ですが、結局すべてが捏造であったことが発覚して犯人は姿を消し、大学院からは追放処分という、既に大家の域に達していたラッカーの名に汚点を残す情けない顛末に終わりました。

 例えばこの不正事件を挙げて「有名な先生がガン発生に新説を唱えたが、それに迎合するようなデータを詐欺師の大学院生が提出、気を良くした大家の先生のワキが甘くなったタイミングでいくつか不正な論文が出たけれど、すぐにバレておしまい、何考えてたんでしょうね・・・では、単なる茶飲み話にもならない。

 そんな情報を読んだところで、誰の科学リテラシーも何ひとつ上がることはないでしょう。